【夜の宝石の女王様】と呼ばれるアクアマリン

美しい海をイメージさせるアクアマリン。和名を藍玉石といいます。鉱物としてはベリル(緑柱石)というエメラルドの仲間。海色のものをアクアマリンと呼びます。地中海の海の色に似ているため、欧州、特に英国人はこの宝石を好むといいます。

別称に、優しく穏やかな雰囲気から想像のつかない【夜の宝石の女王様】という名がついてます。

アクアマリンは昼の光の中ではとても穏やかで優しい輝きを纏っていますが、しかし夜、シャンデリアの光を浴びると一段と美しい輝きを放ちます。故に、パーティ好きな貴婦人たちに特に愛されました。なので【夜の宝石の女王様】。

アクアマリンは海を象徴する宝石で、海の妖精や人魚に結びつけられます。海の妖精の宝物が砂浜に打ち上げられて宝石になった話や、船乗りに恋をした人魚が流した涙だ宝石となって浜辺に打ち上げられ、それを拾った船乗りが御守にした話もあります。それにも由来するのか、航海・海難防止の守護石とされ、船乗りの御守石といわれています。

アクアマリンはその透明感と海のイメージから、人間の精神的な深い部分を連想させ、その深層に巣食おうとする悪魔を退治する、また未来を予測する宝石として信じられていました。また、水に浸してその水で眼を洗うと視力が強まる・眼病が治癒するという話や呪いに関する話など、不思議なほど多くの伝説もあります。

このアクアマリンに異常なまでに執着した歴史的人物がロシア歴史上で“大帝”として名を残す女帝・エカテリーナ二世。実は彼女、ロシア人の血を一滴も持たないロシア皇帝なんです!

ドイツの小国の公女して誕生したエカテリーナは、16歳で時のロシアの女帝・エリザヴェータの甥であるピョートル三世と結婚。母はロシア人・父はドイツ人のピョートルは青年時代をドイツで過ごした影響で、異常なほどプロイセンのフリードリヒ二世を崇拝。それが国益に反するとして、即位から僅か半年でクーデター軍によって殺害されます。その後継者がエカテリーナだったのです。

エカテリーナは領土を拡大し、工業化発展に尽くします。こうして農奴制が拡大する中で、貴族文化が開花していきます。現エルミタージュ美術館である冬宮やエカテリー宮殿の華やかな宮廷生活は宝飾文化の開花の象徴でもありました。

ウラルに開拓した鉱山からは宝石以外に鉄も産出しました。鉄の産出量は世界一を誇り、欧州全土に輸出される鉄は、国を豊かにする財源でした。

現スベルドロフスクはこの頃はエカテリンベルクという名前で、その名の通り、エカテリーナが数千人の鉱夫に採掘させた鉱山として有名で、この鉱山からは、豊富なアメジストやトパーズと一緒にアクアマリンも多く採出されました。

一方で、エカテリーナは10とも20ともいわれる愛人をはべらせてたとか。「政治と恋愛は別物」とはっきり区別していたそうで、打算的で身勝手な印象があります。

実はエカテリーナは世界の皇帝の中でも無類の宝石愛好家としても有名で、ロシアの宝物館の豪華絢爛な大宝石コレクションがそれを物語っています。その中で最も愛したのは、意外にもアクアマリンとアメジストでした。

アクアマリンは人生の航海を護り、アメジストは人生の悪酔いを防止します。

権力の頂上で思うままに生きた女帝・エカテリーナ二世。16歳で故郷を離れ、結婚後半年で未亡人となった彼女は心から信頼出来る者もなく、孤高で孤独な女性だったのかもしれません。その虚しさ故に、男性と恋愛を繰り返し、宝石の神秘の力に魅入られてすがりついていたのでしょう…。

アクアマリンは3月の誕生石。宝石言葉は《沈着・聡明》。宝石のメッセージは《不老/航海・海難防止》です。