絶世の美女クレオパトラに愛されたエメラルド

《エメラルドグリーン》という言葉の通り、新緑を思わせるエメラルドは、まさに5月の誕生石に相応しい宝石です。ベリル(緑柱石)という種類に分類される緑色の鉱物で、和名は翠玉もしくは緑玉。

宝石言葉は《幸運/夫婦愛》。宝石のメッセージは《視力の回復/裁判に勝つ》です。

エメラルドは、妻が持つと憂鬱な心から解き放ち、愛情を深めて貞節を尽くし、幸せになるといわれています。不貞や不誠実を嫌う宝石で、壊れやすいといわれています。もしも身につけているエメラルドが壊れたり、紛失した時には何かのシグナルかも…。

エメラルドには眼や心眼に関する言い伝えが多く、エメラルドを水に浸してその水で眼を洗うと、視力が強くなったり、眼病から回復させるといった話も。また、あのローマ帝国の暴君・ネロは未来を予知するためにエメラルドのサングラスを愛用していたという話があります。

絶世の美女として知られるクレオパトラに愛された宝石としても有名で、彼女は過剰なまでにエメラルドを愛し、エメラルドの鉱山まで持っていました。しかしそのクレオパトラ、実は絶世の美女というわけでもなく、魅力的な瞳を持っていたため、その瞳の力で男性たちを魅了していたという説もあり、その瞳の魅力はエメラルドの力だったとも…。アラブ系の人々の瞳が美しいのも、エメラルドの愛好家が多いからだとか。

その色合いから緑を甦らせる再生力のシンボルとされる女神《ヴィーナスへ捧げる石》でもあります。

ソロモン王の伝説には、神から四方を表した宝石を授かったり、世の中を統治したといわれていて、その時に授かったのが《ルビー/ラピスラズリ/トパーズ/エメラルド》だったといわれています。また、昔のヒンズー教の高僧たちには「完璧なエメラルドはあらゆる毒に効果があり、人間の罪も清める力がある」と信じられていました。さらにキリストと聖ヨハネにまつわるエメラルドの聖杯など、神聖な伝説が多く残されています。

さらに世界三大宝石(ダイヤモンド/エメラルド/パール)、五大宝石(ダイヤモンド/エメラルド/サファイア/ルビー/パール)、七大宝石(ダイヤモンド/エメラルド/サファイア/ルビー/翡翠/アレキサンドライト/キャッツアイ)すべてにダイヤモンドとエメラルドだけが含まれている点からみても、貴重な宝石だということがわかります。

「人間とエメラルドには傷がないものはない」といわれ、“石れい”と呼ばれる内包物や表面に細かい傷が入っているのがほとんど。肉眼でもわかるレベルのものですが、その美しさを損なわせるようなものは別として、内包物や傷こそが本物である証でもあります。

その一方で、エメラルドは一定の方向に筋が入っている“劈開性”という性質を持っていて、特定の方向に力を加えるとスパッと割れてしまう壊れやすい難点も。その性質を生かしたカットが、《エメラルド・カット》。ベリル宝石特有の結晶を効率よく、そして美しく仕上げる長方形や正方形のカットです。

インカ帝国は金の宝庫であり、エメラルドの宝庫でもありました。ところが、インカ帝国を征服したスペイン人たちはエメラルドを知らなかったためその美しさを疑い、先住民たちから取り上げた膨大なエメラルドに、その真偽を確かめるためのハンマーを打ったのです。「本当のダイヤモンドはどんな強打にも耐える」という、ローマ人の誤解に捕らわれていたためです。結果がどうなったかは、もうおわかりでしょう。

インカ帝国を支配したことから、エメラルドはスペインの国石となります。当時、《スペインのエメラルド》は高級エメラルドの代名詞でした。ペルーやコロンビアの国石でもあります。