フランスの大女優が御守としていたオパール

幻想的な輝きで魅了するオパール。日本人女性に大人気の宝石で、10月の誕生石でもあります。虹色の輝きが希望の象徴とされ、古くから《神の石》と呼ばれました。和名は蛋白石。

日本人が好きなオパールは遊色効果のある《プレシャス・オパール》ですが、遊色効果のない半透明の《コモン・オパール》や不透明な《オパライト》というものもあります。

オパールは欧州で一時、《不幸の石》とされた時代があります。原因は、英国貴族の作家スコット卿の著書である“ガイエルスタインのアン”という小説。主人公の少女と髪飾りのオパールに魔法にかけられ、彼女の感情にオパールの髪飾りが反応するといったもので、オパールに聖油かけて魔法が解けます。それが何故か不幸の石として広まり、ひどいケースではストーリー自体が全く違っていたとか。

さらに拍車をかけたのがオパールの性質でした。水分を含むオパールはとてもデリケート。扱い方を知らない購入者から業者への苦情が殺到し、業者自体もその扱いの困難さから加工に苦労しました。また、虹色に輝くオパール独特の遊色効果が、いつしか人の心の移り変わりに例えられたのです。

《不幸の石》時代のオパールを愛したひとりの女性がいます。アールヌーヴォを代表する画家、アルフォンス・ミュシャが描いたことでも有名なフランスの大女優サラ・ベルナール、その人です。

英国生まれで、オランダ系ユダヤ人の母と近所の頼りない学生だった父との間に生まれました。生活は貧しく、将来は修道院に入るのだと思い込むほどに辛い少女時代を過ごします。そんな彼女に芸能界入りを勧める人が現れます。サラは演劇学校で学び、劇団に所属しますが、施設劇場を点々とする日々。そんな中、ひとりのファンからサラに贈られたのがオパールでした。人生で初めて手にした宝石といわれてます。

美しくありながら、不幸の星の下に生まれ育ち、女優という希望に向かってひた走るサラ。変化自在の美しさ故に、不幸の象徴とされるオパール。サラはオパールに女優としての自分をみた気がしました。

不幸の石を常に身につけているサラに、周囲の人々は疑問を抱きますが、しかしサラにとってオパールは守護石でした。

オパールはついに、サラに幸福をもたらします。当たり役に巡り合い、一躍有名になった彼女は国際的女優に!劇団の看板女優となった彼女は、《椿姫》が代表作の、天性の美貌と黄金の声を持った女優として絶賛されました。

サラは新しい役を演じる度、その役に褒美を与えるようにオパールの数を増やしていきます。他の宝石も手に入れますが、それでも彼女が一番愛したのはオパール。サラのオパール好きは広く知れ渡り、彼女のトレードマークとなります。

自身で劇団を設立したサラは、贔屓にしていた宝石商のフーケとミュシャに、設立した年に演じることになった《クレオパトラ》の舞台で使用するオパールのブレスレットの製作を依頼。これをきっかけに、フーケとミュシャは宝飾デザイナーとして後世に名を残すことになります。

サラは片足を切断する事故に見舞われますが、それでも彼女は不屈の精神で女優を続けました。亡くなった時には、フランス国家がその功績を讃えて国葬を与えたほどに、サラは人々の心に刻まれた存在となっていました。

その後、サラの愛したオパールたちがどうなったのかは不明です。しかし、《クレオパトラのブレスレット》が1987年にジュネーブのオークションに登場。サラの死後64年が経っていました。これは大反響を呼び、かなりの高額で落札されました。

オパールの宝石言葉は《希望/無邪気/克己》。宝石のメッセージは《名誉の保護/心眼》です。