幸福の石?それとも不幸の石?サファイア

青く美しく、静かに輝く9月の誕生石・サファイア。実はその色彩は豊富で、無色・ピンク・ヴァイオレット・イエロー・グリーンなど様々。

宝石言葉は《徳望/誠実/貞操》。宝石のメッセージは《浮気封じ/信仰/高潔》です。

身につけることで健康を回復し、持ち主を裏切ろうとする者がいれば、その力を消失させて闘争心を消し、人との調和を高めてくれるといいます。邪念や色欲を消す効果があるので、聖職者や平和主義者が持つのに相応しいとされてます。不義者や好色者が持つと濁るとか。

そんなサファイアの中でも、特に高級なもののひとつに《スター・サファイア》があります。カボッション・カットの表面に、3本の光の筋が交錯して六条の光の星となって浮かび上がったものです。この三本の光の筋は《信頼》《希望》《運命》を表していて、運命の石として、またドイツでは勝利の石と信じられてました。ただその一方で、土星(サターン)に関連する《不幸の石》とした地域もありました。

サファイアには多くの伝説や逸話がありますが、ナポレオンと先妻・ジョセフィーヌにまつわる《皇帝の石》は有名です。

大聖堂を参拝に訪れたバツイチ子持ちのジョセフィーヌ妃に対し、職員たちが特別に秘宝のサファイアをみせたところ、このジョセフィーヌ、何を勘違いしたか「コレで結構よ!」と頷いたのです。驚いたのは職員。実はドイツ征服後にナポレオンに寺院側から聖遺品の中から何かを献上する約束になっていたため、結局は皇帝の命に従い、ジョセフィーヌにサファイアを献上することになります。

このサファイアはナポレオンが心酔するカール大帝の護符で、聖遺品としても特別なものでした。しかし、ジョセフィーヌは簡単な説明を聞いただけで、「大帝を尊敬してる夫が喜ぶ」という単純な思いだったのです。

こうして一度はナポレオンの手に渡った《世界を征服する石》でしたが、すぐに夫から妻への初めての贈り物となったのです。

実はこのジョセフィーヌ、かなりの浮気者で、ナポレオンは悩んでいたのです。愛する妻の浮気癖がなくなれば…そんな夫としての切実な思いがあったのです。その後、立場は逆転。夫は浮気性に、妻は良妻賢母に。サファイア、恐るべし。

ナポレオンとの間に子供を設けることのできなかったジョセフィーヌは精神的に追いつめられ、ついに離婚を決意。その時にでさえ、彼女は夫への愛情を示しました。これに感激したナポレオンは、別れる妻に出来る限りの生活環境を与えます。

ここが運命の分岐点となります。ナポレオンは若く新しい妻を迎え、子にも恵まれ、ローマ王に任命されます。しかし、その後はロシア侵攻に失敗。エルバ島へ幽閉され、妻はすぐさま母国へ逃げ帰ります。その後は夫がセント・ヘレナ島でその生涯を終えるまで、ただの一度も会いに行くことはありませんでした。人々は「ナポレオンが不幸になったのは皇帝の石を手放したからだ」と噂しました。

ナポレオン没後、その安否が気遣われたジョセフィーヌでしたが、「ナポレオンに捨てられた元王妃」に、反逆者・ナポレオンを憎む人々は同情しました。政府と連合軍は彼女を丁重に扱い、後に彼女の館にはロシア皇帝までもが訪れるほど華やかな場所となりました。ジョセフィーヌは何不自由なく過ごし、静かに息を引き取ってその生涯を終えました。

もしもナポレオンがあの時、《皇帝の石》を手放さなければ、歴史は大きく変わっていたかもしれません。

このサファイアはジョセフィーヌの娘から、様々な人へと受け継がれ、現在はフランス東北部にあるランスの大聖堂に納められています。

ちなみに、フランスのサファイアの宝石言葉は《後悔》です。