お判りかとは思いますが、採掘されたその瞬間から、宝石はあんなに整った姿形をしているわけではありません。

原石の形は様々ですが、どの宝石たちも、そのままの姿ではハッとするような目映い輝きを醸し出すことはほとんどありません。あの輝きは理想の形に磨かれてこそ、引き出されるものなのです。

いろんなジュエリーを見てもわかるとおり、宝石のカットには実に多種多様な技術があります。その中でも最も単純なのが、カボッション・カット。

カットとはいっていますが、宝石の表面を磨き上げるもので、実際に切るようなことはありません。不透明なものや半透明のもの、キャッツアイ効果のある宝石によく使われる技術です。また、スタールビーやスターサファイア、スターガーネットもこの形が理想です。縞模様が入っている宝石も、この形で磨くと、独特の表情を見せるので素敵です。

ここからは実際に宝石を切るカット技術の話なります。

カットする際、「この宝石にはこのカット!」なんていう決まりはありませんが、その宝石の特性が生かしやすいということはあります。

ダイヤモンドの場合だと、ラウンド・ブリリアン・カットが1番美しいとされています。上から見ると多面カットの円形で横から見ると下部が逆三角形に尖っている、左右対称のカットです。しかし、ラウンド・ブリリアンカ・カットが開発される前までは、全体的なバランスは一緒でも、カット数が少ないローズ・カット系が主流で、薔薇のような光を生み出すカットは欧州ではアンティーク好みの人たちに今でも愛されています。ラウンド・ブリリアン・カットに近いオールド・ユーロピアン・カットや細かいカット数のジュビリー・カット。他にもカット数が少ない、スイス・カットなども。

また、同じ円状のものでも、ラウンド・ブリリアン・カットを楕円状にした、オーバル・カットという技法もあります。
エメラルドだとその傷や劈開性を生かした正方形や長方形のスクエア・エメラルド・カットが魅力的です。また同じスクエア・タイプでも、カットが細かいプリンセスカットや、反対にカットが少なめのスクエア・カット、テーブル・カット、フレンチ・カットなどがあります。ブリリアンとスクエアの中間のような、イングリッシュ・スクエア・ブリリアンというのもあります。

また、大粒の原石でしか作れないカットもあり、ドロップ・タイプのものがまさにそれです。ブリオレット・カットやパンビル・カットと呼ばれるものが主流で、豪華さを象徴するようなものによく使われます。

このカットの使い分けは、加工する石の状態や性質によって決められたり、光を強く出したいのか、色を強く出したいのかでも選択肢は変わります。

元々のカットをベースにして、独自のカットを施す人もいますから、そこまで考えると、もはや宝石のカットの可能性は無限大です。

しかし、上質なダイヤモンドの場合は、やはり1番オススメのカットは、ラウンド・ブリリアンでしょう。このカットはダイヤモンドを1番美しく輝かせるプロポーションをです。光が強すぎず、弱すぎず、最も綺麗な透明度と虹色を同時に放つ、ダイヤモンドのために作られた絶対的なプロポーションなのですから。