枯れ葉の散る秋の色。11月の黄昏。ブランデーの色…これらは11月の誕生石・トパーズを表現した言葉です。黄色い宝石の代表ともいえるトパーズの宝石言葉は《友愛/希望》。宝石のメッセージは《幸福/友情/洞察力》です。

トパーズという名はギリシャ語に由来し、「探し求める」という意味を持ちます。トパーズが多く産出された紅海の島々は、深い霧に包まれていて探すことが困難だったため、船乗りたちが《トパーズ島》と呼んでいたことが語源になったといいます。同時に、これまたトパーズの産出国だった古代インドを起因とする説もあり、サンスクリット語の《火》という意味だともいわれています。実は古代にはトパーズという言葉は現在のペリドットやクリソライトを、反対にペリドットが現在のトパーズとクリソライトを指していました。

トパーズの採掘方法として、紀元前一世紀の書物に面白い記述があります。その書物によると、「トパズソ(トパーズ)は昼間に在り処を探すことは出来ない。夜になると光るので、そこに目印をつけ、翌日にその目印を頼りに採掘する」というものです。

この「夜になると光る」ということが起源となり、トパーズには様々な言い伝えが誕生します。

語源の“探し求める”の延長上に《幸福》が、採掘方法方法の“光をみつける”が《洞察力》、“夜になると光る”ことが《悪魔を祓う》などとされ、《幸福になる》という言い伝えに派生していきました。

トパーズの一般的な宝石言葉は《友愛》ですが、これには肌身離さず持つことで真の友人も愛も一生涯話さずにいられると信じられています。真実の友情も愛情も手にすることが難しいことから、“探し求める”というトパーズの語源に関連して選ばれたと考えられたのでしょう。

古代ギリシャ・ローマでは、太陽と黄金をを象徴するトパーズとクリソライトが特に愛されました。特にローマ人男性は多くの指に指輪をたくさん嵌めていましたから、その指に似合うトパーズが非常に好まれたのです。

この時代は、指輪を嵌めることと、ダクティリオカという指輪を保管するための宝石箱を所有することが紳士のたしなみであり、条件とされていました。当時の男性たちは、紳士の証として信じられないほどの指輪をその指に嵌めていました。

アレクサンダー大王の少年期に3年間、教育係として仕えたとして有名な哲学者・アリストテレスもまた、そんな男性たちのひとりでした。

アリストテレスは性格や風貌が派手で、それは贅沢好みの男だったいいます。なんと、すべての指に嵌めることができるのかと思うほど大量の指輪を嵌めていたというから驚きです。それを注意したのが、師であるプラトン。それが原因でふたりは不仲だったとも…。そんなプラトン自身だって、たくさんの指輪を嵌めていたといいますから、結局、ふたりとも流行を追っていたんですねぇ。

トパーズといえば黄色の透明石という印象が強い宝石ですが、赤や淡褐色、ピンクや、オレンジ、淡緑色、青、無色などのたくさんの色が存在します。

米国・NYの自然史博物館には世界で最も美しいといわれるトパーズが所蔵されていて、水色で463カラットもあるといいます。この宝石、実は純日本産。この事実は意外と知られていません。

現在、黄色の透明石は黄水晶のシトリンやアメジストを加熱処理したリオ・グランデシトリンなどを始めとして、30にも及ぶ種類があるといいます。そのため、トパーズに関するトラブルや誤解は後を絶ちません。専門家の間では、これらを区別するために、本来のトパーズを《プレシャス・トパーズ》とか《インペリア・トパーズ》と呼んでいます。